自己紹介

オンライン遺伝カウンセリングルームジーヌ代表。日本で唯一認定遺伝カウンセラーと生殖医療診断士、両方の資格を持つカウンセラーです。長年不妊治療クリニックで遺伝カウンセラーとして多くの患者様の相談をお受けしました。 現在は、不妊治療患者さんのためのオンラインカウンセリングルームジーヌを主宰しています。 特に、PGT-A・PGT-SR検査に関しては、日本産科婦人科学会の認定制度の発足以前より、PGTを希望されるカップル(ご夫妻)延べ5,000組、10,000名にカウンセリング、さらに、PGTの結果として検出されるモザイク胚の移植についての相談も1000件以上受け、多くの健康なお子さんの誕生のお手伝いをさせていただいております。

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2024/06/01

卵子凍結の不透明 ①導入の経緯

 東京都が昨年度、都内在住の1839歳の健康な女性を対象に、将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存するための費用を最大30万円まで助成する制度を設けたところ、想定の7倍を超える申請があり、今年度は事業費を5億円に拡大し継続すると報道されています。山梨県、大阪府池田市でも同様の助成制度を始めるようです。

「出産とキャリアを両立する環境を整え、優秀な人材の定着を狙う」として、福利厚生の一環として卵子凍結の支援をする企業も出てきているそうです。

ノンメディカルな卵子凍結とは、疾患そのものあるいはその病態の治療により早期に卵胞閉鎖に陥るようなリスク因子を持たない、健康な女性が自然の加齢により妊娠することが難しくなっていくことに備えて、卵子を凍結することです。

私が気になっているのは、専門の医師の団体である、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会は積極的に賛成をせず、懸念を表明しているにもかかわらず、行政主導で行われているという点です。

 20235月 日本産科婦人科学会は東京都に以下のような申し入れをしています。

 ノンメディカル卵子凍結に関する日本産科婦人科学会の考え方

1. あくまでも当事者の選択に委ねられる事項である。

2. 推奨しない。

3. 本会は、当事者女性、社会に対して正確な情報提供(動画)を行うことが必須。

4. 本会は、希望者は本会の動画を視聴し、その内容を理解・納得して行うかどうかの決定をすることを推奨する。

5. 卵子などの保存が、本会生殖補助医療登録施設と関係なく希望者と会社の契約というような形で行われ、医療者の手から離れる可能性があることについて十分に検討する必要がある。

 助成制度実施前の令和55月に東京都が行った調査では、ノンメディカルな卵子凍結を実施していると回答したのは87施設中36か所、実施していないと答えた51か所中5か所は開始予定がある、7か所は助成制度が開始された場合には行う、未定・検討中が15か所でした。

令和512月の卵子凍結への支援に向けた調査登録医療機関一覧では登録施設数は59となっています。

読売新聞が20241月に実施した日本産科婦人科学会に登録された617の体外受精の実施施設へのアンケート調査でも、回答を得た188施設中ノンメディカル卵子凍結を行っていたのは60施設(32%)半数近くは2020年以降に開始したと回答。

卵子凍結に賛成をしていなかったクリニックが次々に方針変更している状況が見受けられます。補助金が出ることで多くの需要があることを見越し、後れを取らないよう方針変更しているのではないでしょうか。

また、卵子凍結保管バンクを立ち上げ、多くのクリニックと提携して卵子保存サービスを提供するという事業を立ち上げた会社法人もあります。凍結保管体制が安定的に維持される点については評価しますが、営利目的で先行しており、危機管理(法令整備なども含めて)が疎かになっているように感じます。

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