1990年代初め、PGTが開発された当初は、重篤な遺伝性の病気をもつ子の出生を防ぐことが目的であり、性染色体劣性(X染色体潜性)遺伝病の発生予防として胚(受精卵)がY染色体をもつか持たないかを判別し、Y染色体をもたない胚を選択的に移植する、というところから始まりました。
ヒトゲノムに含まれる30億個の塩基対全てを解読するというヒトゲノム計画が始まったのが1990年、完了宣言が2003年ですから、遺伝子の配列を解読することは今では想像もできないほど難しかった時代ですね。
胚から採取した1個か2個の細胞の染色体を調べる方法として主にFish法が用いられました。Fish法とは、ある染色体の特定の部分のDNA配列にのみ張り付くことのできるプローブと呼ばれるDNA断片を蛍光標識してスライドグラスの上に潰して張り付けた胚由来の細胞と反応させ、目的とする蛍光シグナルが検出できるかどうかを判定するという方法です。
Fish法は技術的に難しく、精度も低い、また24種類すべての染色体を同時に見ることは不可能で、一度検査を行った後プローブを洗い落として、再度別のプローブで検出するということが行われていました。
当時は培養方法も、凍結方法も、今ほど進んでいなかったので、3日目くらいの分割期の胚から細胞を1つか2つ採取して検査を行い、採卵した周期に移植をするという新鮮胚移植を行っていました。
これらの技術的な問題は大きく、当時すでにヨーロッパやアメリカでは多くのPGT-Aが行われていたのですが、2011~2013年ごろヨーロッパの生殖医学会で、PGT-Aを行うとPGT-Aをしない場合に比べて有意に出生率が下がるという研究結果が発表され、世界に衝撃が走りました。
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